趣味ともいえる 彼を想うこと

阿久津 仁愛くんを追いかけるという趣味です

芸術を楽しむということは間接的表現を受け取ることと似ている。

うちの父は、「ミュージカルとか、歌ってないで早くしゃべれよと思ってしまうんだよね~」とかなり終わっている発言をしていたので、若干引いたしびっくりしたけど、ミュージカルを面白いと思えるかどうかって「間接的なメッセージをどれだけ受け取れるか」によるのかもしれない。

 

スタンド・バイ・ミーってどこが面白いの?」と言われたことがある。
私は大好きな映画なので「最高の映画っしょ!?」と言って議論になった。あの映画はシンプルに「少年たちが死体探しに奔走する冒険物語」と捉えると感動は薄くて、もう友達に会えないんださみしいね、で終わる。下手したら、クリスかわいそー!とか。とてももったいない。

スタンド・バイ・ミーは、「自身の12歳の頃」「肩書や生い立ちに関係なく友達になれた頃」ひいては「色あせてしまった友情」などを思い出させる装置であって、映画を観ることでそういう記憶、気持ちを思い出させてくれるから名作なのだと思っている。(もっと言うと、私は映画自体は壮大なプロローグで、エンドロールでベン.E.キングの「スタンド・バイ・ミー」のイントロが流れ出してからが本編だと思っている..........)エンドロールで切なくなって、「子どものころはたしかに持っていたもの」について考えだす時間こそが、あの映画が与えてくれる最高の映画体験だし、極論を言ってしまえば、そういう体験こそが作品を鑑賞することの「醍醐味」なのではないかと思う。

 

ミュージカルも、「なんで突然歌いだすのかわからない」と、本当に純粋に、疑問そうに言う人もいて、それに対していくら「歌っているのは彼らの気持ちで、歌で感情を表現しているんだよ」と説明しても、理解してもらえない。「なんで歌で表現するの?」とか言われる。もうそれはそういうものだからだよとしか…。なんでサッカーは手を使っちゃいけないの?と言われたら困るじゃん。

「目の前で人が歌っているという事実だけを受け取る人もいるんだ」というのは軽くショックでもあった。もしかしたら抱く感想も、「あの俳優、顔がかっこよかったね」とか「あれだけ動けるって、運動神経良いんだね」とか「活舌が良いんだね」「照明がきれいだったね」とか、直接見たまま聞いたままだけの感想なのかもしれない。少しぞっとした。(あまりにも感覚や文化が違うというのは、若干の怖さがある)

でも「鑑賞」や「観劇」を通して思いを巡らせるということをしない人は、そもそも受け手に向いてないんだろうな…。その手の人は「ノンフィクションから得る感動」の方が合っているので、スポーツとか歴史、あるいはモデルとなった人や物があって、それを題材として作られるものの方が面白いらしい。(うちの父も大河ドラマノーサイドゲームにはハマっていた……。)

 

こう書くと、自分をすごく高尚な趣味の人間のように扱っているみたいだけど、逆に私はワールドカップを観ないし、日本が一丸となって盛り上がっていたときも、「オリンピックが始まったら電車が混んで嫌だな」などと言っていた人間なので、これはこれでかなり終わってるなと思う。